ADHD診断済みアラサーが、1年後に海外移住を成功させるブログ

2023年6月を目標にロンドン移住を実現させます

芥川賞小説 「推し、燃ゆ」感想

宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞され、インタビューを見ていた時の発言が気になってこの本を手に取りました。

 インタビューから、この小説が何らかの形で発達障害を描いた作品だとわかりました。

診断名を書かないという判断へのこだわりは
私としても悩んだところなんですよ。結局、この選択をしたのは、ただ病院に行くという話、くだり自体をなくしてしまうこともできたんですよね。なんですけど、現代でいえばそれが自然といいますか、そういうことが周知されてきて、環境によりけりですけど、そういうふうに診断するというくだりがあるのは自然だろうと思って入れて。

https://news.yahoo.co.jp/articles/723647a31707851af119594b61ab84e1c3cf7d2f?page=4 

 

物語は、主人公の「推し」がファンを殴ってしまい、ネットで炎上するところから始まります。

 

主人公の推し活を起点として学校やバイト先での日常が描かれるのですが、筆者は「肉体」もしくは「重さ」として、診断名は出さないまま、主人公の持つ苦しみを描写しています。

自分で自分を支配するのには気力がいる

主人公のあかりは、「肉体」と表すように、自分に付いて回る、積み重なる自分のできなさに苦しんでいるます。その苦しみから、重力を忘れさせてくれるのが「推し」です。

泣いた自分がくやしかった。肉体にひきずられ、肉体に泣かされるのがくやしかった。  

 

ちょっとした物忘れなんて誰もが覚えがあるでしょう。しかし主人公は、失敗を通して何度も何度も何度も自分の不甲斐なさに直面しています。その度対策をしても、あっという間に例外が現れて、また失敗してしまう。居酒屋でのバイトする描写は、読んでいて苦しくなりました。

 

人の知った顔におしぼりと枝豆を出し、お箸と灰皿を置いて、注文票を取り出す前に、ハイボール濃いめ、え、濃いめだと高くつくのかあ、ちょっと濃くしてくれないかなあと言うからあたしの体に記録されていたルートが分断される。

 

 どうしてできないないんて、あたしのほうが聞きたい。涙がせりあがる。

 

推しという社会との接点を通してこのしんどさを描いてくれたのが、本作なのかなと思います。

 

コミックエッセイや、それこそSNS発達障害当事者の声というのはよく目にするし #ADHDあるある なんていうタグも見かけますが、芥川賞作家の描写は突き刺さり方が違うなと思いました。

 

クリニックの先生にオススメしたい。

 

冒頭に置いたインタビューにあるように、筆者が描く現代の発達障害の受け止め方が文学として歴史に残るというのも貴重な出来事だと思います。

ラストは圧巻です。 

 

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